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講演会報告:三石誠司氏「日本の農業・食品産業とTPP」

会場の様子:講師の三石氏とその解説に耳を傾ける出席者の方々

会場の様子:講師の三石氏とその解説に耳を傾ける出席者の方々

引き続き、三石氏が書かれた解題についての解説では、3つのポイントを紹介いただきました。つまり(1)報告書ではサプライチェーンがどのような視点を持つべきかという点を明確な形で指摘していること、(2)コメに対する視点の違いとして、アメリカが売りたい品種は中粒種だが単なるコメでは売れないので、そこでキーワードとなってくるものは有機米であること、(3)ただしTPPの中ではアメリカにとってコメはマイナーな穀物であり、実際の本音は食肉輸出にあること、の3点です。

とくにこの(3)については本書の解題には記していない私見として解説いただきましたが、あくまでアメリカが強い分野で最大のリターンを求めていることがTPPを推し進める背景にあると三石氏は解説されました。農産物の貿易が穀物から高付加価値商品にシフトするも伸び悩んでいる中、中国をはじめとするアジア諸国との競争が起こり、また一方で食の安全・安心への関心の高まりがあり、そのためにアメリカはTPPを必要とし、新たなルール作りをしようとしているというのが三石氏のご説明です。

つまり、健康・安全志向に合致し、生産行程履歴を明確にしたものを輸出すること、有機農産物のコモディティ化、国際基準に沿った生産履歴を提示できる仕組み作りといったルール作りが、TPPを受け入れていく中での大きなポイントになると三石氏は指摘します。そういったルールを作り、日本農業も参加・対応できたら生き残れるのだ、とアメリカは日本を引きあげ、一緒の土俵に上がろうとまで言ってくれるのだが、日本の方は誰も感じてくれないのではないか、ただし、日本側もいろいろな思惑があり、実際は安い農産物を求めてそちらの流れに乗りたい動きを見せるものもあり、なかなか一筋縄ではいかないだろうとも指摘します。

TPPによって起こりうる影響とその品目については、本書のp.36あたりに牛肉やオレンジ、米、チーズ、粉乳、短粒種米、有機米、小麦粉や砂糖といった品目が具体的に報告書に挙げられています。ただし、個別の品目で取りうる解決方法・対策については品目によって当然相違し、どのような方法を導き出すかという方法については報告書ではとくに触れられず、また三石氏ご自身もそれぞれの品目について網羅的な知識や経験は持ち合わせていないので、むしろ講演会に出席された方、この報告書を手に取られた方が、報告書に込められたアメリカのメッセージを十分に汲み取って、TPPの本格的な運用が開始されるまでの猶予がある間に、各関係団体で十分に考えてすり合わせて欲しいと提言されました。

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