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講演会報告:新海宏美氏・吉田俊幸氏「米に関するVesting(権限付与)の布告についての再審査(2016年)」

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吉田俊幸氏

吉田氏は冒頭に、オーストラリアの米産業の概略や、マーケティングボード、Vestingの仕組みについて、現地ヒアリングの様子も含めながら説明し、輸出についてはサンライス社がボード唯一の代理業者であり、同社がオーストラリア産の米の輸出と国内流通で圧倒的なシェアであることなどを整理して報告し、同社の歴史的な経緯や特徴について指摘されました。

講演の内容は、米マーケティングボードの目的や機能に始まり、米の買い取りシステムなどサンライス社を中心としたオーストラリア産の米をめぐる事情について、順を追って説明が行われました。また、日本国内でオーストラリア産の米の輸入量が近年増加傾向であることや、日本向け品種の種子をサンライス社が管理しているなどについても解説され、2018年12月30日に発効したTPP11のもと、いかにオーストラリア産の米が日本に影響を与えるかについても、日本国内の流通、また日本の輸出米の競争力に関して言及されました。また、輸出先国のマーケティングに注力してきたオーストラリアと比較して日本ではこうした努力が少なかったとして、〝日本の農産物は高品質・美味だから輸出できる〟という誤謬を指摘し、日本の米の輸出推進に向けた課題について指摘されました。

続いて登壇した新海氏は、オーストラリア全体の米生産の動向や、マランビジー灌漑地区における現地調査の結果について、典型的な農場における価格、収量、粗利益や、輪作タイプごとの経営分析の結果を説明され、いろいろな作物の中でも群を抜いて米が儲かる作物であることなどを指摘されました。

さらに、灌漑地域における農家経営のポイントとして、平均所得や作付け割合、輪作タイプごとの水の使用率なども踏まえながら、対象地域の農業経営の特徴について分析結果を示されました。

このほか、現地調査での様子や、より詳細な個別経営の状況について、経営規模240haの有機米生産農家などの事例について、生産・販売の実態についてご紹介いただきました。現調査の様子を豊富な写真で紹介されながら、講演を結ばれました。

講演の終了後は、フロアとの質疑応答が行われ、オーストラリアの米政策の仕組みに関する質問や、日本産のコメとの競合の可能性、質疑の応答や、情報提供が行われました。

一般財団法人農政調査委員会では、引き続き、刊行物や講演会を通じて、食料・農業・農村に関する国内・国外の有益な情報を、積極的に発信してまいります。今後ともよろしくお願い申し上げます。

(文責:小川真如)

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