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「意見ひろば」:食料自給率考

2 食料自給率の現状認識と目標設定をめぐる諸問題

 平成に入り我が国の食料自給率はすでに40%台、ここ数年は39%(最新時点の2013年(平成25年)は40%に回復)で推移を見ている(図1)。

 各年の食料自給率そのものの数値は、一定の決められた計算方式によって算出されるので疑問を差し挟む余地はない。しかし、食料自給率の目標を設定するに当たって見られた関係者の食料自給率の数値に対する解釈ないしその認識には、いくつかの大きな問題がみられる。

図1 わが国における食料自給率の推移 資料:農林水産省「食料需給表」から筆者作成

図1 わが国における食料自給率の推移

資料:農林水産省「食料需給表」から筆者作成

 

(1)60年ないし65年の食水準は理想型なのか

 第1に、食料自給率の推移を示す場合に起点としている時点についてである。

 農林水産省は、基本問題調査会が立ち上げられて以来今日に至るまで(例えば、昨年3月に閣議決定を見た基本計画の策定に当たった食料・農業・農村審議会企画部会の開催)、食料自給率については常に60年(昭和35年)ないし65年(昭和40年)を起点にして最新時点までの推移を記した資料を作成し、提示してきている。60年の場合には79%、65年の場合には73%であり、その後年々低下し、2000年に初めて策定された基本計画の際には40%にまで低下してしまっている。そして、先進国の中では最低の水準であるとし、併せて他の先進国の中には自給率を大幅に引き上げた例もあることを紹介する。

 こうしたことを示す資料は、基本問題調査会やその後の基本計画を策定するに際して諮問した食料・農業・農村審議会への提出資料として農林水産省のホームページから入手できる。また、それらの資料について農林水産省の事務方がどのような説明を行ったのかについても、同審議会等の議事録が公開されているのでそれを見れば分かる。しかし、これらの議事録を見る限り、食料自給率を示す場合の起点が何故60年ないし65年なのか、どのような意味があるのかについての説明はみあたらないし、審議の過程で委員等から異論を差し挟む意見が出された形跡もみられない。

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