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理事長の部屋:「進む農協離れ―組織優先やめ「売る」に徹せよ」

食の変化に対応できず

 農協による農畜産物の販売取扱高は、1985年のピーク時から2012年には3分の2にまで減少し、シェアは農業総産出額の半分以下となった(図1)。農業者の農協離れは、大規模経営層だけでなく、零細農家にまで波及している。

図1 農協の販売取扱高、シェアともに減少している

図1 農協の販売取扱高、シェアともに減少している

 なぜ農協離れが進んでいるのか。農協組織を経由した販売は流通コストが高く、生産者の手取りが低いためである。

 日本の農協は、平等原理に基づく無条件委託販売が基本原則である。農家は生産物の販売を、値段や売り先など条件無しで地域の単位農協(単協)に委託し、さらに単協は、全国農業協同組合連合会(全農)に委託し、主に市場に出荷する。各農家には地域ごとの平均売値をもとに、手数料と流通コストを差し引いた額が支払われる。小売価格に占める生産者手取りは30~40%台である。

 この販売システムは、戦時中の食糧管理制度における統制流通を原型とする。外食・中食の拡大や流通革命が進展していなかった70年代以前の食の消費・流通を前提としており、時代遅れである。農家に平等性を確保するとともに、農協には手数料と流通コストを優先的に保障するもので、農協の経営・組織維持を第一としている。

 70年代以降、食市場は大きく変化したが、農協の販売システムはその変化に的確に対応できなかった。

 販売のみならず、生産資材の供給においても、農協の独占的な地位は揺らいでいる。農協取扱高は94年の3兆4000億円をピークに12年には2兆1000億円へ減少し、シェアは、農薬が72%から58%へ、飼料は29%に低下した。

 生産資材購買事業も「メーカー―全農―単協」という統制流通を原則としており、単協がメーカーから直接仕入れることはできない。農業者への販売価格は、全農の仕入れ価格に各段階で手数料や流通経費を上乗せする方式である。そのため、農協の生産資材は他の業態に比べて必ずしも安くない。

 本来、農協の目的である「生産者の手取り確保」は、販路開拓と需要拡大によって売り上げを安定的に確保すると同時に、農業資材を低価格で供給しコストを削減することで達成されるはずであった。しかし、農協は、販売における価格維持ばかりを優先してきた。

 典型は、中食・外食など価格志向が強い業務用需要への対応の遅れである。12~13年にはコメ相対価格を全農がつり上げたため、外食・中食は盛りを減らすことで対応し、需要は減少した。

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