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理事長の部屋:「進む農協離れ―組織優先やめ「売る」に徹せよ」

原料・生産の海外シフト

 今後、人口減と超高齢化社会を迎えると、農協を取リ巻く環境は厳しさを増す。

 人口減により、20~25年には食料支出総額と数量は90%前半に低下する。「食」消費は量的変化だけでなく、質的変化も加速する。増加する高齢世帯や共働き世帯、単身世帯、貧困世帯は食の簡便化や価格志向が強い。介護食の需要も増す。

 ところが、現時点でも加工用、中食、外食分野では、原料を海外から輸入する割合が高い。農水省の調査によると、外食産業における食材費の輸入品割合は45%であり、野菜の加工・業務用における輸入品割合はトマトが78%、タマネギ53%、ニンジン51%である。食品産業では、生産拠点を海外に移し、製品を国内に輸入する動きが活発化している。

 国内の生産・流通には食の変化に積極的に対応し、輸出を含めた需要を創造することが求められている。これまでの変化にさえ対応できていない農協の販売システムでは、来る人口減・高齢化時代の構造変動に対応することは不可能である。農協はTPPに反対の論陣を張るが、縮小する国内市場を囲い込んでも展望は開けない。

 人口減と高齢化は農協の組織・経営基盤も揺るがす。

 農村地域は全国的な動きを10年程度、先取りしており、既に農業者の正組合員数は減少傾向にある。正組合員の減少をカバーしてきたのが、非農家の農協事業利用者である准組合員の増加だが、今後は准組合員も都市部を除いて減ることは間違いない。

 組合員が減れば、経営の基盤も揺らぐ。農協の利益構造は、これまで信用(預金、貸し出しなど金融)・共済事業で農産物販売や資材供給といった経済事業を支えるというものだった(図2)。だが、組合員が減れば、信用・共済事業の利用高減、ひいては利益減となり、経済事業の赤字を埋めることが困難となる。

図2 農協1組合当たりの部門別損益

図2 農協1組合当たりの部門別損益


依存から自立へ

 農協はその原点に立ち戻り、販売を軸とした産地戦略をとり、農産物の需要拡大を目指すべきである。その転換により、これまでの全農に依存した販売体制から、単協が主体であり、全農は補完という位置づけに変化する。食市場の変化に対応するためには企業などとの連携は不可欠である。信用・共済事業依存を脱し、経済事業が経営面で自立しなければならない。

 モデルとなるのは、前述の異端、例外の単協である。加えて、食の変化を先取りし、積極的に販路を開拓する生産者グループや会社が各地に生まれている。本来、農協が果たすべき役割に沿った、いわば第2農協と呼べる存在である。

 トップリバー(長野)は事前の販売契約に沿ってレタスやキャベツの生産体制を組む。売り先は大きさに応じて量販店や外食チェーンなどさまざま。新規就農者の育成も行う。

 和郷園(千葉)は契約販売に加え、冷凍やカット野菜の加工を手掛ける。新潟ゆうきは50戸近い農家と集落営農を組織し、減農薬、減化学肥料栽培を行い、コメを百貨店はじめ業者や消費者へ直接販売し、加工も行う。

 農業者も、生産物を農協へ全て販売委託するという農協依存型から脱しなければならない。ニーズに沿った出荷先と生産活動を自己責任で選択する「農業経営者」に変わるのである。農協は販路の選択肢の一つとなり、農業者に選ばれるべく、農協間で地域の枠を超えた競争も起きてくるだろう。(了)

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