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理事長の部屋:“減反廃止”でも続く価格統制 下落を前提に対策を講じよ

昨年1月、安倍首相は「減反廃止」を高らかに宣言した。だが内実はむしろ生産調整を強化し、コメ取引への規制を強めている。

(※本記事は「週刊エコノミスト」2015年5月12日号に掲載された記事を再編したものです。)

 コメの生産調整、いわゆる減反が本格的に実施されて45年が経過したが、2018年から“廃止”されることになった。

 “減反”という言葉から、コメ生産を抑制するために、国が農家の自由な作付けを禁じていると捉えるかもしれない。確かにかつてはそうだった。しかし、10年の戸別所得補償制度(コメの直接支払交付金)の導入により、既に生産調整は選択制に移行している。

 現在は、国から割り振られたコメの生産目標数量を生産者が守ることが、戸別所得補償の受給要件である。この点のみが“生産調整”である。数量を守って戸別所得補償を受給するのか、数量以上に作付けして戸別所得補償を受給しないのか、生産者が選択する。

 18年にはこの戸別所得補償制度が廃止される。コメは高関税で守られているという理由からである。すると、コメ生産目標数量は引き続き示されるものの、それを生産者が守るための仕組みがなくなり、水田での作付け内容は形式的には生産者の経営判断に委ねられる。これをもって“減反廃止”と銘打っているのである。

 コメ余りを避ける方針に変わりはない。その際、国が定めた生産目標数量を守らせるのではなく、それぞれが需要に応じて生産しようとすれば、自然と生産は抑制される―というわけだ。生産調整は形を変え、推進主体は国から地方目治体と農協に移行する。減反“廃止”といっても、劇的な方向転換がなされたわけではない。

 国は引き続き、需要に応じたコメ生産を進めるため“環境整備”を行う。国の環境整備の特徴は、米価を「市場」で決定するのではなく、安定取引―すなわち、売り先の見通しがつく分だけコメを作り、価格を安定させることにある。その上で、水田で主食用米以外の作物を作るよう促す。水田に作付けする飼料用米はじめ麦、大豆などに対する交付金を充実させる。加えて、需給・価格情報、販売・在庫情報を提供する。

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