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理事長の部屋:“減反廃止”でも続く価格統制 下落を前提に対策を講じよ

■強制に逆戻り

 14年、政府は減反“廃止”に向かって踏み出した。18年の戸別所得補償の全廃に先立ち、支給額を半減したのである。何か起こったか。

 コメの民間流通在庫は14年6月末に過去最高となり、14年産の米価、特に農協が農家からコメを集荷した際に払う概算金の大幅下落を招いた。米価の下落と戸別所得補償の半減による打撃は、農地集約を図ってきた大規模経営ほど大きかった。

 コメ過剰を解消し、米価を安定させるために、政府は生産調整とコメ取引規制を強化した。

 まず、20万トンの「過剰米」を市場隔離し、生産者の資金繰り対策などを実施した。加えて、15年産の生産目標数量は前年より14万トン減の751万トンに設定し、「自主的取組参考値」という「超過達成目標値」を導入した。その数量は12万トンであり、達成した都道府県には産地交付金を追加で10アール当たり5000円配分をする。国が都道府県や市町村に対して生産調整を事実上強制する仕組みに逆戻りである。

 さらに、作付け前に売り先を確定させる契約栽培による安定取引、全国農業協同組合連合会(全農)の概算金や卸との相対取引価格の設定について3~5年間の平均にするなどのルール設定を検討している。つまり、コメ取引の規制強化による価格安定である。

 1995年に食糧管理制度が廃止され、コメ流通が自由化してから20年。96年にMA(ミニマムアクセス、最低限輸入量)米が輸入されるようになってから19年がたつ。この間、世界貿易機関(WTO)体制のもとで、高関税、生産調整、価格維持を基本として生産者の経営安定を図る政策は有効に機能せず、結果的にはコメ消費減と価格下落を招いてきた。 95年と比べると、コメの消費量は14年には83%へ減少し、米価も不作などによる一時的な上昇はあったものの近年、50~60%へ低下し、コメの総生産額は半減した。

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