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理事長の部屋:“減反廃止”でも続く価格統制 下落を前提に対策を講じよ

■最大のリスクは政策変化

 問題は、20年前にコメ流通は自由化されたにもかかわらず、それに見合った政策が構築されなかった点にある。今後、人口減、高齢化社会を迎え、コメ消費の減少は加速化する。政策も、水田経営も転換が求められている。

 3年後には、生産調整が“廃止”されるが、14年の事態が示すのは、価格は市場原理に委ねるしかないという現実である。価格下落を前提に、需給を反映する市場による指標価格の形成と、担い手の経営悪化と脱落を防ぐセーフティーネット(直接支払いや経営安定対策など)を構築することが不可欠である。そうしなければ、地域の農地を集めた大規模経営の脱落を招ぐ恐れがある。その上で、コスト削減を図り、コメや日本酒等の加工品の輸出など新たな需要拡大を図ることである。

 しかし、現実は価格形成システムを生産調整も、さらに経営安定対策もほぼ3年ごとに変化しており、その内容も小出し的な修正にとどまっている。政策の基本にはいまだに、価格維持・安定による生産者の経営安定が残存している。

 当の水田経営にとっては、政策のめまぐるしい変化が経営リスクとなっている。今、その最たるものは飼料用米である。

主食用コメ以外は補助金漬け

主食用コメ以外は補助金漬け

 政府は減反“廃止”の一方で、水田の代替作物の作付けを促進するために多額の補助金を投入している(表)。特に飼料用米は生産者手取りの9割を占める。飼料穀物の内外価格差はコメよりも大きく、生産が拡大すれば多額の補助金を必要とする。また、生産拡大が飼料穀物の輸入減につながれば、補助金に対して国際的な批判を浴びる恐れもある。補助金が維持されるかどうか不透明である。

 農業経営体にとって、主食用米と水田の代替作物に依存した経営は、米価低下と政策変化による経営リスクが大きい。コメのみによらない経営の複合化、多角化が求められている。コメ政策に求められているのは、小出しの修正ではなく、高価格で所得を支える「守り」から、世界を視野に入れて需要拡大する「攻め」への転換である。(了)

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