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のびゆく農業:No.1047:スコットランド農村地域における土地所有モデル別の社会・経済・環境的アウトカム

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■原文:
・スコットランド農村地域における土地所有モデル別の社会・経済・環境的アウトカム

■発行:2020年1月15日

■解題・翻訳:井坂 友美(ニューカッスル大学大学院博士課程)

■対象:スコットランドEU

■ページ数:46p.

■在庫:あり

■目次:

  • 解題
  • 1.背景
  • 2.土地所有の政策的背景
  • 3.近年の土地所有モデル-規模、促進要因、動向
  • 4.スコットランドにおける主要土地所有モデル別のアウトカム
  • 5.課題と可能性及び解決策

■解題より:

2016年11月に発行された本稿は、2016年3月に英国議会で可決された土地改革法Land Reform (Scotland) Actの内容をカバーしており、2000年の封建借地等廃止法Abolition of Feudal tenure etc. (Scotland) Actから今般にわたるまでの一連の土地改革の動きを概観することができる。スコットランドでは、一部の富裕層に広大な私有地が集中していることが長らく社会政治的な問題となっており(本稿にもある通り、北海道とほぼ同じ土地面積を有するスコットランドの8割が私有地であり、その半分を約400人の地主が所有しているという実態が「世界的に見て最も集中した土地所有制度」と言われるゆえんである)、2003年及び2016年の土地改革法の施行等を通じて、コミュニティやNGO団体などによる土地所有の多様化が推進されてきた。本稿は、そのように土地所有主体が多様化する中で、土地所有主体別の土地マネジメントの実態を整理するとともに、各土地所有形態が経済(ビジネス部門別の収入・支出や雇用状況)・社会(コミュニティ活動の状況)・環境(自然保護活動の状況)において生み出している効果を客観的に明らかにしている。

このようなスコットランドの土地問題の背景に対して、日本では戦後農地改革で地主・小作制度を解消して半世紀以上が経ち、現在は主に賃貸借による担い手への農地の集積・集約化が推進されており、両国の農地問題は文脈が大きく異なるものである。ただし、本稿では詳しく議論されていないが、売買による農地集積、農業補助金獲得のための農地保有、借地農保護の強化による地主の借地意欲停滞などが原因で、スコットランドの借地比率は現在23%(2015年)まで低下しており、新規参入促進等の観点から借地比率を向上させることもスコットランド政府の課題となっている 。このため、2016年の土地改革法においては、借地契約の種類を増やす等、借地拡大のための措置がとられていることも注目される。しかしながら、スコットランドと日本のいずれにおいても農村地域の持続的発展を目指して土地所有・利用のあり方が議論され、そのパターン変化をもたらす政策・制度が設計されてきた。こうした観点からは、土地改革と同時に進められてきたコミュニティ権限付与の動き(具体的には、2003年にコミュニティに土地先買権が付与された)の中にも、2015年のコミュニティ権限付与法Community Empowerment (Scot-land) Actにより、特定の状況においては、売り手の意思に関わらず耕作放棄地を買い取る権利がコミュニティに付与されたことや、クロフティング・コミュニティCrofting Communityが土地を購入する場合には地図情報の入力が義務付けられたこと等 、近年の日本の農地政策、さらには土地政策を考える上で興味深い点も含まれている。
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