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のびゆく農業:No.1049-1050:米国農業法の20年-商品・保全・作物収入保険の支出推移からの分析-

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■原文:
・米国農業法の20年-商品・保全・作物収入保険の支出推移からの分析-

■発行:2020年6月30日

■解題・翻訳:三石 誠司(宮城大学)

■対象:米国

■ページ数:73p.

■在庫:あり

■目次:

  • 解題
  • イントロダクション
  • 誰が政府からの支払いの恩恵を受けたか?
  • 作物計画・保全計画・連邦作物保険計画からの支出
  • 大規模農場へシフトする農業生産
  • 計画支払いおよび連邦作物保険補償におけるシフト
  • 高所得世帯へシフトする支払い
  • 新南向「地域農業発展」フラッグシップ・プラン
  • 付録A 主要な商品計画、保全計画、連邦作物保険計画の簡単なリスト(1991-2015年)
  • 付録B

■解題より:

本稿は、2017年11月に米国農務省経済調査局が公表した報告書「The Evolving Distribution From Commodity, Conservation, and Federal Crop Insurance Programs」の全訳である。作成者は、Jonathan R. McFadden and Robert A. Hoppeであり、報告書としては、同局のEconomic Information Bulletin 184号として、インターネットで公開されている(2020年5月7日に確認したアドレスは以下のとおりである。https://www.ers.usda.gov/webdocs/publications/85834/eib-184.pdf?v=43068)。

本報告書に注目した理由は非常に単純である。米国農業法をその研究対象の一部としている者には非常に興味深い内容であるからだ。簡単に言えば、米国農業法史の中でも極めて重要な1991年農業法以来、何度にもわたり様々な改正が行われてきた米国農業法を、政府支払いの変化という視点から俯瞰した数少ない報告書だからである 。

よく知られているように、米国農業法は極めて実践的な法である。数年ごとに適用期間を限定し、市場の動向と連動させた様々な施策を実行してきている。それだけでなく、米国農業の歴史そのものが農業法の歴史と密接に関係している。1980年代前半に穀物取引の世界に足を踏み入れた筆者にとっては、まさにキャリアの前半は上下に揺れ動く穀物価格と、猫の目のように変わる米国農業法の新しい施策に翻弄された時期であったと言ってもよい。

だが、長期的な視点から米国農業法を振り返ると、いくつかの興味深い流れが見えてくる。本報告書は、そうした経過と具体的内容、さらに結果を明らかにしている。これらを踏まえ、いくつか気が付いた点を解題として記しておきたい。

第1は、歴史的な流れの中で米国農業法が何をしてきたかが再確認できることである。
簡単に言えば1930年代の大恐慌下と引き続くかんばつの中で今日の米国農業法の原型とも言える政策が開始され、続く1940-60年代には大型化と生産性の向上に代表される米国農業の基本的な「型」が定着した。この結果、米国農業は、順調な生産が継続すれば大量生産による価格の低下が宿命となり、米国農業法が継続的に直面した最大課題は需給調整となったのである。

もちろん、農産物の生育は天候に左右されるため、豊作時には大量生産の結果として市場にあふれた農産物の価格は低下する。自動車産業の例を出すまでもなく、大量生産は大量消費の市場を確保してこそ成立するという基本的な命題を宿命として抱えた形で米国の農業は発展してきたと言ってもよい。

その結果、国内での市場拡大とともに、海外市場の開拓=輸出は、世界経済発展の流れの中で大きな役割を担うこととなった。日本の高度経済成長期における畜産用配合飼料産業の発展などもこの流れに沿ったものである。

だが、価格低下が長期に及ぶと農家は困難に直面する。従来の米国農業法最大のポイントは、この部分にどう対応するかであった。価格支持政策に始まり、目標価格を事前に定めた上で市場価格との差額を支払う形の不足払い、さらには作況にかかわらず固定額を支払うことなど、1970-80年代の米国農業法はいくつかの古典的手法でその時々のニーズに対応してきたと言ってもよい。ラフに言えば、これが1990年代前半までの流れである。

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