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のびゆく農業:No.1051:次期CAP改革:CAP戦略規則案の説明覚書

■原文:
・次期CAP改革:CAP戦略規則案の説明覚書

■発行:2021年3月15日

■解題・翻訳:平澤 明彦(農林中金総合研究所)

■対象:EU

■ページ数:50p.

■在庫:あり

■目次:

  • 解題
  • 次期CAP改革:CAP戦略規則案の説明覚書
  •  1.提案の背景
  •  2.法的根拠、補完性および比例性
  •  3.事後評価・利害関係者協議・影響評価の結果
  •  4.財政上の影響(implications)
  •  5.その他の要素

■解題より:

今回取り上げるのは、EU共通農業政策(CAP)の次期改革にかかる提案の全体像とその立案過程を説明した公式文書である。

欧州委員会は2017年11月に次期CAP改革の概要構想「食料と農業の将来」(The Future of Food and Farming, COM (2017) 713)を提出した。それを元に具体的な施策の検討が進み、翌2018年の6月1日には改革の詳細を定める3つの規則案についてそれぞれ提案文書を公表した。各提案文書は規則案に「説明覚書」(explanatory memorundom)と予算書(Legislative Financial Statement)を加えた構成となっている。今回訳出したのはこれらのうち「CAP戦略計画規則」提案文書(COM(2018)392)(注4)の説明覚書である。

説明覚書は提案文書の冒頭に置かれた説明書である。その内容は3つの提案文書でほぼ同じであり、次期CAP改革の経緯と考え方、施策の概要、3つの規則案の要点、それに影響評価についても記されている。次期CAP改革とその規則案の審議に必要な情報をまとめたものと考えてよいであろう。分量は原文で15頁と比較的短くまとまっている。最終的な規則にはこうした説明覚書が含まれないので、この文書は欧州委員会による包括的な解説として貴重である。また、EU内の手続きにかかる記述を含んでおり、そこからEUにおける政策形成の様子をうかがうこともできる。

CAP改革の基本的な枠組みは、欧州委員会の規則案によってほぼ定まるのが通例である。CAP改革に限らず、欧州委員会が法制案を提出するまでにはある程度の利害調整が済んでおり、通常その後は大きな方針の変更はなされない。そのため、この説明覚書は次期CAP改革の枠組みや方向性を捉える上で有益であると考えてよいであろう。

とはいえ、規則案はあくまでも欧州委員会の提案にすぎない。最終的な規則はこの規則案を理事会と欧州議会が修正して作られるため、この文書で説明される新制度の詳細には実現しないものも出てくるであろう。実際、これまでのCAP改革においては規則が成立するまでに加盟国間やEU機関間の利害調整によって改革の内容は薄められる傾向が顕著であった。

また、今回の改革では、個々の施策だけでなく、むしろそれ以上に各種施策の統合や組み合わせ方に力点が置かれている。それを反映して主要な規則が整理統合され、個々の規則の構成も変更される。そのため、次期CAP改革の理解には、CAPの施策全体の構成を把握する必要がある。二つの柱にまたがったグリーンアーキテクチャーの議論や、直接支払と農村振興政策がCAP戦略計画の下に統合されることが良い例である。

それに加えて、説明覚書はCAP戦略計画規則の施策の具体的な内容については言及がそれほど多い訳ではなく、規則案(前文の説明条項(whereas)や条文本体)を読まなければ不明な点も多いので、要点についてはこの解題の中で適宜説明する。